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言語研究は古来人間の営みとして盛んであります。その中で、いわゆる語彙論は、世の中でも、言語学界でもはなはだ低い認知度であります。原因はいろいろありますが、最大の原因は、語彙そのものの認識の低さにあると思います。
語彙論の中でも、個々の語の研究は逆に古来盛んであり、その成果は「辞書」として結実して大いに人々に便宜を提供しています。しかし、文字通り語の集合としての「語彙」に対しては、その実用性にも関係して、はなはだ貧弱な認識しかない状態です。その実、言語学が真に人間生活に資するものになるためには、単に言語内事実の究明だけに関わっていてはなりません。その言語を育て又その言語に育てられる人間文化との関わりを持つ必要があります。その研究を含めて「語彙研究」が完全になります。
語彙には文化が反映します。他言語間の語彙比較研究によって、それぞれの文化・思考形態を比較し、相互に相違性と共通性を理解し、尊重する気風を持つことは、これからの世界平和・人類の安寧福祉のためには、即効的効果は持たないとしても、必要不可欠のことであります。言語教育によってコミュニケーションを進めるにも相互の物の考え方を理解することこの研究の進展を願い、語彙研究を偏頗無く進展させることを目的に語彙研究会を組織しました。
言語学諸部門の内で存立さえ疑われていた語彙論を、1995年、私は比較語彙論の構想を発表して、その対象選定の方法と、分析方法の提示することにより言語学の中に確固たる地歩を築いたと自負しております。そして、比較語彙論は突き詰めていけば「語彙論」そのものです。
現在、留学生を中心とする多くの学徒がこの比較語彙論的方法によって研究成果を上げつつあることは周知であります。 96年以来、名古屋大学内で、不定期に開いておりました研究会を2000年から定期的に開き、さらに2003年9月を期して語彙研究会を全国組織として開放いたしました。
一方、私、田島毓堂は、言語学の世界における語彙論的研究の一層の進展を期待して、名古屋大学を2004年3月退職するのを機に、退職金を主な原資として田島毓堂語彙研究助成金を設立して、語彙研究の助成を目指しております。 2004年は「公益信託田島毓堂語彙研究基金」の第1回の募集をしております。
平成16年7月
名古屋大学名誉教授 田島毓堂
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